神楽坂で働く気になる人に会ってじっくり話を聞きたい……。
そんな単純な理由で勝手にはじめたこの企画。
第1回目にご登場いただくのは、
靴を作り続けて27年、シューデザイナーの捧恭子さんです。
十数年前にここ神楽坂に引っ越して開店した
アトリエ兼ショップ「belpasso(ベルパッソ)」は、
毘沙門天の脇道を歩いて2分ほどのところにあります。
神楽坂の賑わいが遠ざかる静かな一角。
口コミで人気の予約制のアトリエは看板もさりげなく、
知らない人は気づかずに通り過ぎていくことも。
ブルーの扉を開けるとガラス窓の工房が見えてきます。
この小さな工房で作られる世界でひとつの靴を求めて、
全国各地、遠くは海外からもお客様が訪れます。
入り口のチャイムを鳴らすと捧さんが自らお出迎え。
玄関には靴や革製品がディスプレイされていて、
さっそく見入ってしまいます。
中へ通していただくと、
捧さんの愛犬マロンちゃんが案内してくれました。
アトリエにずらりと並んだ靴はすべて捧さんの手作り。
ブランド名の「belpasso」は、
イタリア語の「bel」(美しい・心地良い)と、
「passo」(歩み)の意味が込められています。
花や葉をモチーフにした靴はエレガントで美しく、
革の上品で繊細な色合いが目を引きます。
捧さんは、金沢美術工芸大学大学院工芸を修了後、
ヨーガンレールのテキスタイルデザインに携わり、
「発想からすべて自分で考える物作りがしたい」と
一念発起して靴作りの世界に飛び込みました。
大手ブランドの靴工場で働きながら
東京のエスペランサ靴学院を卒業し、
イタリア語学校にも通ったあと、
ミラノの靴学校 ARS STURIA in Italia へ留学。
本場で靴作りを学び帰国すると、
オリジナルブランド「belpasso」の靴作りをスタート。
その後2010年まで「Belpasso」の靴作りと並行して、
大手婦人靴ブランドのデザイナーや
靴学校の講師も務めていました。
現在は定期的に、東京、金沢、京都、大阪など、
各地で個展を開催しています。
「こちらの靴はサボテンがモチーフなんですよ」と
笑って教えてくれた捧さん。
サボテン柄のヒールなんて、遊び心があって素敵です!
履いているだけでワクワクしそうですね。
私もパンプスを何足か試し履きさせていただいて、
そのあまりの履き心地の良さに感動!!
イタリア製の柔らかい革が爪先と踵をふわっと包み込み、
「スニーカーより歩きやすそう!」と口にしたほど。
すると、もうすぐ社会人になる捧さんのお嬢様も、
「私もスニーカーより歩きやすくて、
いつもBelpassoの靴を履いてます」と教えてくれました。
3年前から紳士靴も作っています。
先日、イタリアに住んで20年になる日本人男性が、
帰国した際にこちらのアトリエを訪れて、
「イタリアの靴よりイタリアらしい!」と、
お買い上げした靴をそのまま履いて帰られたそうです。
捧さんは靴をひとつの作品として作っています。
なぜなら靴は履き捨てるものではなく、
一生大切にして履き続けるものだから。
捧さんの顧客には10年、20年と靴を修理しながら、
長く履き続けている人が多いというのも頷けます。
アトリエに並んでいる靴はサイズや色、足形が合えば、
5~6万円台からお買い求めいただけます。
より心地よくお客様のお好みに合わせて仕上げる、
細かいニーズに合わせたオーダーメイドももちろん可能。
お好きな色・素材の革を選んでいただく
カラーオーダーは7~8万円台から。
お足のサイズをお測りして基本の木型を元に
足に合う木型を作成して作る
セミオーダー(仮合わせを含む)は15万円から。
木型、型紙、中底、本底を新たにお作りする
フルオーダーは23万円から。
“一生ものの靴”を探している方は、
ぜひ一度、belpassoを訪ねてみてくださいね。
belpassoホームページ http://belpasso-acs.info
取材・文=樺山美夏
※こちらの記事は最新ではなく2016年に取材しまとめたものです。
現在の状況とは異なる場合がある事をご了承ください。